ピアノソナタ「虎伝」

■作品名 (Title)
ピアノソナタ「虎伝」
■委嘱団体 (Commissioned organization)
「織茂 学 ピアノリサイタル」委嘱作品
■作品No (Work No)
002
■作曲年 (Composition year)
1999
■グレード (Grade)
上級程度(ピアニストはトロンボーンのマウスピースで音が出せること)
■演奏時間 (Duration)
約15分
■参考音源 (Audio Sample)
■出版社 (Publisher)
■解説 (Commentary)
ピアノソナタ《虎伝》
―前橋市の伝説による―
~織茂 学ピアノリサイタル 委嘱作品~
ピアノソナタ「虎伝」 ~前橋市の伝説による~

第一楽章:赤城山の鷹狩り 「Tempo rubato」第二楽章:美女お虎    「Andante」

第三楽章:怒り狂う殿様  「Allegro con moto」

第四楽章:哀れみの詩   「Tempo rubato ― Arioso」

この作品は前橋市に伝わる「お虎伝説」を題材として作曲した「ソナタ」です。ソナタと言えば一般的に〈提示ー展開ー再現〉と構成される“古典ソナタ形式”を思わせますが、根源的に解釈すると“奏鳴曲”(楽器を鳴らす曲)を意味するものです。私は今回、織茂さんから「ソナタ形式の変遷をテーマにリサイタルを開くので現代作品として新しいソナタを書いてほしい」と依頼を頂きましたので,この“楽器を鳴らす”という語源の意味と“提示と展開”という古典理念の応用を方向付けた作品を書くことを決意しました。尚,題材に選らんだ「お虎伝説」は前橋の伝説の中で一番有名なので聞き手の方に楽しんで頂けるものだと織茂氏から推薦を頂きました。この作品の楽しみ方は,各楽章に渡るお虎と殿様に関連づけた動機が姿を変えながら登場することにあります。殿様の威厳ある旋律,お虎の優しい旋律の絡み合いを,お楽しみ下さい。

第一楽章 〈赤城山の鷹狩り〉では,ほら貝をイメージした効果音で用いて当時の時代背景を描写する場面から導入し、その中で鷹狩りをする殿様の威厳を象徴する音群が提示されます。そして,後半部ではお虎との偶然の出会いが設定されるドラマが演出されます。

第二楽章 〈美女お虎〉では気立てがよく礼儀のある美しいお虎を描写した緩徐楽章になっています。どことなく寂し気な雰囲気を醸し出しています。

第三楽章 〈怒り狂う殿様〉悪女中たちがお虎を陥れるために殿様のご飯の中に縫い針を入れました。当然、殿様は御給仕役のお虎に怒りをぶつけます。
この楽章では怒り狂う殿様と誤解を解こうと誤るお虎の言い争いの場面を描写しています。一,二楽章にそれぞれ提示された殿様の動機とお虎の動機が交互に切迫していきます。

第四楽章 〈哀れみの詩〉では無実の罪で殺されたお虎の怨念によって利根川が大洪水となる場面で開始されます。その後、お虎の魂を鎮めるレクイエムとしてコラールが奏され終結の時を迎えます。

物語をご存じな方は是非情景を浮かべながら聴いて頂きたいと思います。この作品は現代的な響きが随所に現れますが,この不協和な響きは人間の〈憎しみ〉や〈怒り〉と捕らえて頂ければ理解できると思います。本日は織茂さんが演出する「音の残像」をお楽しみ下さい。

1999・12・16 織茂 学ピアノリサイタル プログラムより

演奏レベル :上級程度(ピアニストはトロンボーンのマウスピースで音が出せること)
演奏時間  :約15分

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