吹奏楽指導者のなかで素晴らしいと思われる方はどなたですか?―最近あらゆる機会でそう尋ねられることがある。私はそんな時に尊敬する何人かの指導者と共に必ず“原進”の名前を重ねる。原さんは確固たる技術を持ちながらも、聴衆へ訴えかける音楽を常に探究し続けている温かい指導者だからだ。そんな原さんから今回、東海村吹奏楽団の委嘱作品のお話を頂き私は嬉しい気持ちで一杯になった。しかし、まだ直接交流のなかった東海村吹奏楽団に作品を書くことは私にとって難題であった。これまで吹奏楽曲は50作品以上手掛けてきたが、どの作品も交流の深いバンドに書いたものであり、奏者の表情やバンドの特性を理解した上で作曲していたからだ。そういった意味で《カンティレーナ》は原さんを通して感じとったバンドのイメージのみを頼りに作曲するほかなった。原さんからのメールを読み返したり、東海村吹奏楽団のホームページを何度も見たりして、最終的に“叙情的な旋律”という意味を持つ、このタイトルを名付けた。「八木澤さんのメロディーに合ったバンドですよ」と原さんが何度も笑顔で語っていたからだ。この作品が東海村吹奏楽団の皆様に共感して頂き、その想いが客席に温かく響くことを祈っている。記念すべき第一回目の演奏会で作品を演奏して頂けることに心より感謝し申し上げる。 |