市川市立新浜小学校吹奏楽部応援のページ-第二章-第二項

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第二章:吹奏楽コンクール 第二項:県外への進出

9月21日 本番一日前に公開練習!!!

 プロの世界でも本番前日というのは落着かないものです。しかし新浜小にはそんな心配はないようです。この日は埼玉の久喜東中学校吹奏楽部の皆さんが観光バスを借りて新浜小の体育館練習を見学にいらっしゃいました。田川先生に「本番前に大丈夫なのですか?」と質問したところ「誰が見ていてもいつもと同じ練習をしますよ。かえって見学者がいらした方が緊張感があって良いです」と笑顔でおっしゃっているので私もお言葉に甘え,作曲家の神長一康さんと以前より新浜小に興味を持っていたホワイタル・ウインド・アンサンブルのバス・クラリネット吹きの今泉夏子さん,アンサンブル市川のクラリネット吹きの高橋澄恵さんを見学にお誘いしました。この日の奏は一週間前のTBSこども音楽コンクールの時とも演奏が変わり,翌日の茨城県立県民文化センター用に創り上げた音楽になっているのです。このホールは音を響かせるのが大変難しいとのことで音の発音・処理から残響に至まで田川先生は研究されているのです。神長さんたちも子供離れした表現力に心から感動したようです。前日にも関わらず練習は一時間弱で終了し見学にいらした中学生と,音楽室で合唱の初見大会が行われました。「明日は結果を気にせず八木澤先生やお客さんに感動して頂ける演奏をしますから」と語る田川先生。コンクールとしての本番ではなく,あくまでも子供たちが一生懸命に練習してきた音楽を客席に届けることを目標としているのです。

2002年9月22日「東関東吹奏楽コンクール 小学校部門」

 いよいよ東関東大会の開催日になりました。会場が茨城県の水戸ということで私も朝早く起き上野から
スーパー日立で旅立ちました。特急の中で富山ミナミ吹奏楽団の新作をスケッチしようとするものの落着きません。東関東ともなれば各地から優秀な学校が選ばれてくるのですから激戦になるのは当然です。田川先生は全く賞にこだわっていませんが「新幹線に乗ったことがない子供たちを仙台に連れていってあげたい」という強い思いがあります。もちろん私も同じ気持ちで一生懸命厳しい練習を頑張ってきた子供たちに素敵な思いをさせてあげたいと願うばかりです。ようやく会場に着きふと気がつくと,この
茨城県立県民文化センターは私が中学一年生(1988年)の時に関東大会が行われたホールなのです。当時,母校である市川市立第二中学校は課題曲「深層の祭」(三善晃作曲),自由曲「交響曲第3番“オルガン”」(サン=サーンス)で千葉県の代表4校(当時,関東は東と西に別れていませんでした)に選出されたのです。余談ですが加養浩幸先生の指揮する千葉市立土気中学校,佐藤正人先生の指揮する川越市立野田中学校に運悪く挟まれ,金賞は受賞したものの全国大会には出場できなかったのです…。さて本題に戻り,会場へ入るとちょうど昼休憩中でした。プログラムを確認すると新浜小は15番。一つ前には噂で聞いていた金管バンドの水戸市立笠原小学校が!!!そして本番前で控えている田川先生にお会いすると「午前中にとても素晴らしい演奏がありました。ちょっとドキドキです。でも精一杯演奏します」とうかがい,本当にハイレベルの学校がたくさん出場しているのだと再認識しました。まもなく演奏がはじまるとのことで,応援にかけつけてくれた友人の風間学氏共に審査員の前あたりの席に着きました。後方には東京学館浦安中学・高等学校吹奏楽部の顧問である佐久間先生を発見!!遠いところ皆んな新浜小の音楽を聴きにいらしているのを見てとても暖かいものを感じました。

一団体,二団体と演奏が続き14番の水戸市立笠原小学校の出番がやってきました。舞台での雰囲気が何か違う。新浜小と同じだ。明らかに子供たちからオーラのようなものが感じられる。演奏を聴く前から期待をさせる何かがあるのです。客席もほぼ満席になり,人々は「笠原だ,メチャクチャ上手いぞ!!」などと既にざわめいている。演奏が開始すると私はすぐに耳を疑いました。この金管のサウンドは本当に小学生なのか?演奏曲はスパークの「長く白い雲のたなびく国アオテアロア」という難曲。ハイトーンから木管楽器で奏するような急速なスケールが次々に顔を出す。聴衆を魅了させる迫力と細部まで練習した痕跡がうかがえる。本当に噂通りの素晴らしい演奏なのです。もしかしたら技術と迫力では新浜小を超えているかもしれない。しかし,私は不思議と楽しい気分になりました。「世の中は広い。新浜小のような学校。いや,それ以上の学校もきっとあるんだ。小学生の可能性は本当に無限なんだ」と,更なる興味がわいてきました。
そして田川先生が普段からおっしゃっている「賞よりも感動できる音楽を!!」という言葉の深みを心から理解できた気がしました。演奏が終わると客席はざわめき人々は感想を口にしています。誰もが笠原小の演奏に圧倒されたようです。そして同時に聴衆の期待は新浜小へ。「笠原と新浜はどっちが上手いかな?」「新浜は今以上の演奏できるの?」と客席は比較モード。

新浜小の子供たちが舞台へ入場してきました。笠原小の時と同様に会場の様子が何か違う。細かく意図
された打楽器の配置,扇状に舞台に広がる美しい椅子の並び。暗譜をして田川先生の指揮の合図を待つ子供たち。千葉県大会の時に同じく何かを期待させる。木管楽器のキラキラした波を表す弱奏と共に,打楽器群が朝日を照らす。笠原小の迫力ある開始とは曲のタイプが全く違う。朝日が徐々に登り穏やかな海の旋律がホルンで奏でられる。そして完全に太陽が海を照らし緊張感が頂点に達すると,客席はまるで大きな海に浮かぶ船のように暖かく包み込まれました。「これが新浜小のサウンドだ!!田川先生と子供たちは心を一つにして旅をしているんだ」それからは演奏を聴くというよりも,映画を見ている気分で演奏を見守りました。場面は一転し荒れ狂う嵐の海へ。その気迫といったら田川先生と子供たちが本当に海で嵐に遭遇し生命の危機に陥っているかのようだ。横を見ると「もう止めて!!」と言わんばかりに目を隠したり耳をふさいでいる聴衆がいる。「皆んなにも見えているんだ」私は確信しました。嵐が過ぎ再び穏やかな海となり,雄大な海を表すコラールが奏でられる。その時の子供たちは心から田川先生を信頼している表情で,言葉には表せない暖かいものが感じられました。「田川先生と子供たちは『輝きの海』にたどり着いたんだ」思わず私も涙がにじみでました。演奏が終わると客席では涙をふいている人や隣同士で「良かったね」と顔を見合わせている。もはや言葉での説明はいらないのです。そして「良かったね」という,たった一言がこれほど重みを持つ瞬間はないだろうと思いました。風間氏も「お腹いっぱいだ。こんなに贅沢な時間を過ごせることはなかなかないぞ」と心から満足しているようだ。何しろ作曲者が心から感動しているのだから本当に「良かった」のです。田川先生にお会いし私は感想よりも何よりも「ありがとうございました」と心から一言御礼を言わせて頂きました。作曲家としてこれほど嬉しいことはありません。私の仕事は五線紙という二次元の世界に私のイメージを音符という記号で記しただけなのです。それを田川先生と新浜小の子供たちは音楽として空間に響かせ,人に感動を与えてくださったのです。本当にありがとうございました!

  

東関東吹奏楽コンクール小学生部門
金賞受賞団体

代表地区
学校名
備考
栃木県
栃木市立栃木第三小学校
 
栃木県
真岡市立真岡小学校
 
茨城県
ひたちなか市立高野小学校
 
茨城県
東海村立舟石川小学校
 
茨城県
水戸市立笠原小学校
第二回東日本学校吹奏楽大会へ選出
千葉県
市川市立新浜小学校
 第二回東日本学校吹奏楽大会へ選出 
栃木県
宇都宮市立清原東小学校
 

 

■東関東大会の結果■
千葉県代表 市川市立新浜小学校 金賞(第一位)を受賞。
東関東代表として第二回東日本学校吹奏楽大会(10月13日仙台)へ進出決定。
第一章
第二章:吹奏楽コンクール
作品はこうして生まれた!!
第一項:千葉県大会
第二項:県外への進出
第三項:東日本の壁

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