空中都市「マチュピチュ」― 隠された太陽神殿の謎【2019改訂版】 / Machu Picchu : City in the Sky (2019 Version)

■作品名 (Title)
空中都市「マチュピチュ」― 隠された太陽神殿の謎【2019改訂版】
Machu Picchu : City in the Sky (2019 Version)
■委嘱団体 (Commissioned organization)
川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団 委嘱
■作品No (Work No)
024
■作曲年 (Composition year)
2004
■グレード (Grade)
4+
■演奏時間 (Duration)
約10分50秒
■演奏可能最低人数 (musician)
35人
■参考音源 (Audio Sample)
■出版社 (Publisher)
     
■解説 (Commentary)
 川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団の委嘱作品として作曲した2004年。当時29歳であった私は同団の団長である越川博さんから「リベルテの編成を自由に使って好きなように、書きたいテーマで作曲してみていいよ」とお話を頂きました。作曲家としてまだ名が知られていなかった私は、幼少から大好きであった世界遺産「マチュピチュ」を題材に、同団の大きな編成を存分に生かしたドラマチックなスタイルでこの曲を作曲しました。こんなチャンスは二度とないかもしれないという想いで作曲しました。
その後、世界初演の指揮者であった福本信太郎先生のご紹介でアメリカの巨匠ユージン・コーポロン氏の目に止まり、アメリカの名門ノーステキサス大学ウィンド・シンフォニーでも演奏され、更にはアメリカの指導者のバイブルとも呼ばれるGIA吹奏楽指導書「Teaching Music Through Performance in Band」にも掲載されました。作曲時の想像を遥かに超えた展開でしたが、驚く間もなくブレーン株式会社から連絡があり、名誉ある米国テキサス州吹奏楽指導者協会(Texas Bandmasters Association)主催のコンクール課題曲に選ばれたことを知りました。初めて訪れた2008年のミッドウエストクリニック(シカゴ)では私の名札を見た数多くの指導者からお声をかけて頂き、こんなにも海外で《マチュピチュ》が知られていることに身震いをしたほどでした。
その後、海外での仕事が増えていく中で、各国によって吹奏楽に対する事情が異なることを肌で感じていきます。様々な話を聞いていく中で、編成を標準的にして各楽器の難易度も国際水準にすれば、より多くのバンドのレパートリーになるかもしれない、と《マチュピチュ》の改訂を考えるようになりました。何よりも作曲した当時はマチュピチュへまだ訪れたことがなく、憧れと想像のみで作曲しました。実際に現地でマチュピチュを見た経験を積んだ今、新たな気持ちでオーケストレーションをしたいと想い、この2019年改訂版が誕生しました。今後は、手の出しにくかった中学生バンドや中編成バンドにも親しんで頂けましたら幸いです。2004年の解説より
川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団第30回定期演奏会委嘱作品として作曲し、福本信太郎氏の指揮と同団によって世界初演。「マチュピチュ」について語るには15世紀から16世紀にかけて、アンデス山脈の様々な地域を短期間に統一した大帝国“インカ”をさけることはできないでしょう。 インカ帝国の首都クスコは黄金の国とも呼ばれ、現在のペルーよりも遥かに高度な文明を持っていました。しかし、1533年に膨大な黄金を狙うスペイン軍に侵略され、インカの象徴“太陽神殿”が破壊されてしまったのです。こうして歴史上、文明はこの時点で滅びたと思われていましたが、それから340年後にアメリカの考古学者によって、スペイン軍の侵略を免れた遺跡“ マチュピチュ”が標高2400メートルという想像を絶する山の中で発見されたのです。 この発見によって当時、王族と共に太陽神殿はスペイン軍の侵略を免れ、空中都市“マチュピチュ”に隠されていたという説が浮上したのです。まだ発見されて100年も経っていない神秘的な“マチュピチュ”。今回は空中に眠るこの壮大な遺跡、そして過去に封印された多くの謎に迫る作品を目指しました。 (詳しい解説とマチュピチュの写真は「作曲家 八木澤教司のホームページ」をご覧ください)

(八木澤教司)

空中都市「マチュピチュ」ー 隠された太陽神殿の謎
Machu Picchu : City in the Sky
― The mystery of the hidden Sun Temple

■ 川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団第30回記念定期演奏会 委嘱作品 ■
2004年度よりこれまで温めてきた古代遺跡をテーマにした作品を連作として書くことにしました。
第一作目となったのは陸上自衛隊東部方面音楽隊委嘱作品である
「モアイ」― 太陽を見つめる七体の巨像。
今回の空中都市「マチュピチュ」はそれに続く第二作目にあたる作品です。

■ マチュピチュはインカ帝国の隠された神殿であった ■
●インカ帝国の首都クスコと時代背景●15世紀から16世紀にかけてアンデス山脈のさまざまな地域を短期間に統一した大帝国“インカ”。
その規模はアンデス山脈を中心に,エクアドルからチリにまで及んだという。
インカ帝国は現在のペルーよりも遥かに高度な文明を持っていた。
ピューマをかたどって造られた首都クスコは,
太陽を崇拝した人々にとって宇宙観の中心地そのものであった。しかしスペインの侵攻後,破壊された街並みは,
インカの藁葺き屋根からスペイン風の赤い瓦屋根へと変わっていった…。
現代ではインカ時代の面影はほとんど消えてしまっている。

インカ帝国は強大な力を持った中央集権国家であった。
カミノ・デル・インカと呼ばれた道がクスコを中心に四方に広がり支配地域の隅々まで整備されていた。
クスコの王は1万平方キロにも及ぶ広大な地域の情報を瞬時にクスコに集めるために2.8キロごとに小屋を設けて飛脚を置いた。
インカ帝国当時から使われている橋桁 ― 巨石を組んで造られたものは今も現役である。
巨大な権力を持っていたインカは水道設備や道路なども整備されたものであった。
このように当時クスコは高度な文明を持った巨大祭礼都市であったのだ。

インカは建築技術も高度な技術を持っていた。
ラ・コンパーニャヘスス教会の隣にある,街の中央を走るロレート通りを見れば明らかである。
この通りには昔ながらのインカ時代の石積み建築の面影が今でも残っている。
インカでは都市の石積みに成形された画石が使われた。
正確な石組はカミソリ1枚通さないと言われる緻密なみのである。
又,十二画に切った石をモザイク上に隙間なく並べている壁や,
複雑に形成され隙間なく並べられた通りの石積みには,インカの人々の遊び心さえも感じられる。

さて,最も注目すべきものはインカ帝国の中心に位置していたコリカンチャ(太陽神殿)である。
太陽神殿はインカが崇拝した太陽を祭った神殿であったが,今はそこには外壁と一部の建物しか残っていない。
内部には月・太陽・稲妻・虹・星と呼ばれる部屋があり,破壊された今でもその石組みにズレは少ないようだ。

一方,アンデス山脈の梺に位置する広大なこの大帝国は,膨大な“黄金”を持つ,まさに黄金に輝く国であったが,
クスコは1533年,黄金を狙うスペイン人に侵略され文明と共に滅び去ってしまった。
スペイン人はインカの象徴である太陽神殿を破壊し,その上にはスペイン統治時代の象徴サントドミンゴ教会が建てた―。
こうしてインカ帝国の文明は長い間,歴史上かに途絶えたと思われていた。

―しかし,太陽神殿は破壊されていなかった?―

●それから340年後 ― 空中都市「マチュピチュ」が発見された!●

340年後,1911年にスペイン人の侵略を免れた遺跡(マチュピチュ)がアメリカの考古学者によって発見された。
標高2400メートルという誰もが考えてもいなかった山の中に…。
しかも発見されてからまだ100年も経っていないというのが神秘的である。
どうして何百年も発見されなかったのだろうか。
そして多くの謎に包まれたこの空中都市「マチュピチュ」(老いた峰)が今回のテーマなのである。

1911年に発見された空中都市「マチュピチュ」遺跡

スペイン人たちも気付かれることのなかったマチュピチュは
インカ時代の破壊されなかった唯一手付かずの遺跡でもある。
観光として遺跡を見た現代の人々は「つい最近まで人々が生活していたような面影が残っている」と皆んな口にするという。
ただ,どのような技術を使って,こんな険しい山の上に石の街を築いたのであろうか。
又,どのように大量の石を運んできたのかも謎である。
そもそもマチュピチュが何のために創られたのかもまだ明らかになっていないのだ。

一説に戦時中に王族が逃げ込む隠し砦として造られたのではないかと考えられている。
マチュピチュにはクスコで破壊されたものと同様な太陽神殿も発見された。
王族と共に太陽神殿はスペイン人から守るためにマチュピチュへ隠されたのではないだろうか。

マチュピチュ遺跡で最も注目すべきはインティワタナ(太陽をつなぎ留める柱)と呼ばれる石である。
インカの人々は太陽が軌道を外れないよう神に祈る儀式で,礼拝石として利用してと言われている。
彼らの脳裏には,遠い祖先が体験した大惨事の際の潜在的記憶が「天体の軌道変化=大災害発生」となって残っていたのだろうか。
再び太陽が軌道をはずれ大惨事が起きないように毎年,冬至の日には,
石柱の真上に来た太陽をつなぎ留めようと石柱に紐をかける儀式を行っていたという説もある。
インティワタナは日時計としても使用されていたという説もあり真実は謎である。

その他にも自然の地形をそのまま利用したアンデネス(階段畑)が作られ、高山であるにも関わらず水路も整備されていた。
又,半月の寺院,3つの窓の寺院,太陽の処女の宮殿,水路や泉,浴場などが高度な建築技術を用いて造られていたようだ。
この都市は自然を利用して自給自足が出来るようになっている。まさに秘密の隠れた都市と言えよう。

インティワタナ

太陽神殿

美しい水路

更に洞窟から143体のミイラを発見されているが,その大部分は若い女性だった。
しかもその多くは,頭をかきむしり,口を開けて絶叫しているすさまじいもので薬物による死をも想像させる。
彼女達に何が起こったのかも全くの謎である。

文字を持たないインカ帝国が3000年以上も続いたことが何よりも神秘的で不思議なことである。
滑車や歯車の技術を持たなかったインカ帝国の人々がこのような場所に本格的な石造建築の都市を築いた事は驚きに値する。
マチュピチュは当時インカ帝国が高度な都市建造技術を持っていた証そのものだと言えよう。

― マチュピチュは「マチュピチュ」の歴史保護区として1983年にユネスコ世界遺産に登録された ―

●参考文献:ユネスコ「世界遺産4」~マヤ文明・インカ文明より●
●写真提供:松岡絵里さんHP「世界一周デート」より転載。

■ 空中都市「マチュピチュ」―隠された太陽神殿の謎について ■

資料を集めた結果として,今回の作品は空中都市「マチュピチュ」の美しい情景ばかりでなく,
その裏に隠された多くの謎に迫るものを目標としました。
作品のイメージはこんな感じです。

太陽を崇拝する黄金の都“クスコ”を象徴とした華やかな導入。
膨大な黄金と高度な文明を持つ首都クスコの街並み,アンデス山脈の雄大さを描写する第一部。

スペイン軍によって侵略されていくインカ帝国の様子を描写した第二部。

滅びたと思われたインカ帝国。
しかし太陽神殿と共に発見された空中都市「マチュピチュ」。
標高2400メートルと更に太陽へ近づく隠された都市を壮大に描写。
美しい段々畑や高度な建築物をイメージした第三部。

このように大きく3つの場面で構成されています。
当作品は4声で絡みゆくお馴染みの特徴的なコラールは使用していませんが,
どことなく寂しい民族風コラールが登場しますョ!

Machu Picchu – City in the Sky
The mystery of the hidden Sun Temple

Satoshi Yagisawa, Composer

Explaining the significance of Machu Picchu begins with remembering the Incan empire at its zenith, and its tragic encounter with the Spanish conquistadors. 378 years later an archeologist from Yale University, Hiram Bingham, rediscovered “Machu Picchu”, a glorious mountaintop Incan city that had escaped the attention of the invaders. At the central high point of the city stands its most important shrine, the Intihuatana, or “hitching post of the sun”, a column of stone rising from a block of granite the size of a grand piano, where a priest would “tie the sun to the stone” at winter solstice to insure its seasonal return. Yagisawa describes that magnificent citadel as three principal ideas dominate the piece: 1) the shimmering golden city of Cuzco set in the dramatic scenery of the Andes, 2) the destructiveness of violent invasion, and 3) the re-emergence of Incan glory as the City in the Sky again reached for the sun.

Catalog #ZOMS-A024
Duration: 12:00 Grade 6
Price: $145.00 (with oversized score)

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Publisher : bravomusicinc
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■編成 (Instrumentation)
Piccolo
1st Flute
2nd Flute
Oboe(opt.)
Bassoon(opt.)Clarinet in E♭
1st Clarinet in B♭
2nd Clarinet in B♭
3rd Clarinet in B♭
Alto Clarinet in E♭(opt.)
Bass Clarinet in B♭
Contrabass Clarinet in B♭(opt.)1st Alto Saxophone in E♭
2nd Alto Saxophone in E♭
Tenor Saxophone in B♭
Baritone Saxophone in E♭
1st Trumpet in B♭(div.)
2nd Trumpet in B♭
3rd Trumpet in B♭1st & 2nd Horns in F
3rd & 4th Horns in F1st Trombone
2nd Trombone
3rd TromboneEuphonium
Tuba
String Bass(opt.)Harp(opt.)
Piano

Timpani

【1st Percussion】
Glockenspiel
Vibraphone/Chimes

【2nd Percussion】
Glockenspiel/Marimba

【3rd Percussion】
Crash Cymbals
High-hat Cymbal
Gong
Triangle (high)/Wind Chimes
Temple Block (4)/Ratchet
Bongo/Bird Call
Vibraslap

【4th Percussion】
Suspended Cymbal
Whip

【5th Perdussion】
Bass Drum
Tom tom (4)/Gong

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