「時のあとに」― 我が故里へのオマージュ / After the time we had

■作品名 (Title)
「時のあとに」― 我が故里へのオマージュ
After the time we had
■委嘱団体 (Commissioned organization)
奈良県立片桐高等学校吹奏楽部 委嘱
■作品No (Work No)
019
■作曲年 (Composition year)
2004
■グレード (Grade)
3+
■演奏時間 (Duration)
約6分20秒
■演奏可能最低人数 (musician)
30人
■参考音源 (Audio Sample)
■出版社 (Publisher)
ウインドアート
■解説 (Commentary)
■八木澤教司 「時のあとに」―我が故里へのオマージュ

<作品について>
●「時のあとに」とは/奈良県立片桐高等学校吹奏楽顧問・川北秀樹

この作品は,私の勤務する奈良県立片桐高等学校吹奏楽部の委嘱作品で「なつかしさ」や「想い出」がテーマになっています。今まであった出来事,そしてこれから起こる出来事が“良いこと”“悪いこと”も含め,何年後かに思い返した時に,それが自分にとって素晴らしい想い出になってほしい…という作曲者のメッセージが込められています。

前半部では次々と浮かんでくる懐かしい思い出が,八木澤氏独特の美しいコラール によって表現され,中間部は印象的なリズムのせて,今まで経験してきた困難や苦しかった出来事が表されています。そして,それを乗り越えて成長した自分を見つめ,これからも希望を持って人生を歩んでいって欲しいという気持ちが後半部のコラールに続き,エンディングを迎えます。

実は片桐高等学校は2007年3月末,統合により斑鳩高等学校と合併し,法隆寺国際高等学校として生まれ変わります。毎日当たり前のようにみんなで騒いでいた教室や何百人もの生徒が過ごしていた校舎は使われなくなります。 しかし,片桐高等学校で出会った友達や先生,楽しかった日々は一生忘れることはないでしょう。これからも私たちの意志は引き継がれ,夢を持って進んで行きます。サブタイトルである~ 我が故里へのオマージュ~には,たとえ学校という建物や名称は無くなってしまっても,みんなで過ごした想い出はいつまでも自分にとって「ふるさと」のような存在であって欲しいという願いが込められています。

私たちもこの曲を通してたくさんの経験をしました。片桐高の生活において苦しいこともありましたが,今思い返せば全て良い思い出になっています。「時のあとに」 何を残していくか…生徒たちには今この瞬間を大切に,素晴らしい思い出をたくさん作って頂きたいです。

●私と片桐高吹奏楽部の関わり/作曲家・八木澤教司

私が吹奏楽界にデビューするきっかけとなった21世紀の吹奏楽第4回“響宴”(2001年3月に東京芸術劇場大ホールにて開催)。そこでは私が大学一年生の時 に手探りで書いた「ディメレンタスII」という作品が公になりました。著名な作曲家 の先生方と並んで演奏される喜びと共に未熟さを痛感した一日でもありました。そして同時に大学院修了まで一ヶ月を切った,将来に不安を抱えた時期でもありました。

この演奏会から少し経った頃,「ディメレンタスII」をぜひ演奏したい,生徒も大変気に入っています―と,川北先生から初めてのお電話がありました。これまで知り 合いのバンドにしか作品が演奏してもらえなかった私にとって,喜びと共に驚きがあったことを今でも覚えています。それから川北先生と片桐高吹奏楽部との交流が始まり, 2002年3月には同校の定期演奏会にも客演として招いて頂く機会にも恵まれました。片桐高の生徒さんは本当に明るく素直で,私に多くの勇気を与えてくれました。 そして,生まれて初めて“自分の作品を喜んで演奏してくれる人がいる”と感じた瞬間でもありました。今,私が吹奏楽界で活動出来ているのは,こんな経験があったからだと心から感謝しています。

2003年夏,片桐高は私の代表作である,吹奏楽のための音詩「輝きの海へ」を吹奏楽コンクールで演奏し,創部以来初の関西大会出場を成し遂げました。これからの発展を誰もが期待していたことでしょう。しかし,片桐高は数年後には無くなってしまうのです…。委嘱を頂いた時にテーマは「統合への悲しみ」を訴えかける作品にという話題もありました。私も当初はその予定で作風を計画していましたが,このことを直接作品として残すことは関係者の皆様にとってマイナスのイメージを残すことになってしまいます。私はあえて「想い出」をテーマにすることにしたのです。私にとっても,いつまでも大切な想い出にしたいですから…。

■編成 (Instrumentation)
Piccolo
Flute 1
Flute 2
Oboe
Bassoon
Clarinet 1
Clarinet 2
Clarinet 3
Bass Clarinet
Alto Saxophone 1
Alto Saxophone 2
Tenor Saxophone
Baritone SaxophoneTrumpet 1
Trumpet 2
Trumpet 3
Horn 1
Horn 2
Horn 3
Trombone 1
Trombone 2
Trombone 3
Euphonium
Tuba
String BassTimpani
Percussion 1-3
Xylophon,Glocken,SuspendedCymbal,Tambourin,Chimes,Windchimes,Gong,Bass Drum

関連記事

  1. 「モアイ」― 太陽を見つめる七体の巨像 / Moai – The Seven Giant Statues Gazing at the Sun

  2. 「ラックル伝」~ 国造りの神々

  3. 「ヘリングの朝」~ そして暗闇は光に満ちた… / ” Morning of Keith Haring ” And … the darkness was filled of happiness

  4. ファンファーレ「はやぶさ」 / Fanfare – HAYABUSA

  5. 「コンチェルティーノ」― ソロ・パーカッションとウインドオーケストラのための ― / Concertino for Solo Percussion and Wind Orchestra

  6. ファンファーレ・エヴァーグリーン / FANFARE EVERGREEN

  7. ファセクラ / FAXICVRA

  8. 「光の射す道へ」~ ぬくもりの在処 / To the Path in the Sun – The Story of Helen and Anne –

  9. 「オアフ島の情景」~碧き海と聖なる大地の歌 / Scenes from the Island of Oahu – The Sea and the Earth –

  10. 吹奏楽のための譚詩「天女の飛翔」 / A Ballade for Wind Orchestra “The Angel’s Flight”

  11. 「ある街の風景」~イタリア・ローマにて / A Scene of Rome

  12. ウインドアンサンブルのための「パーテル・ノステル II」 / Patel Noster II for Wind Ensemble

  13. センテナリー・セレブレーション / Centenary Celebration

  14. サクソフォーン協奏曲第1番「ミスティック・クエスト」 / Saxophone Concerto No.1

  15. 「セントルイスの風」~万国博覧会に向けた男の情熱とロマン~ / The Wind of St.Louis – A Man’s Dream of The Louisiana Purchase Exposition