【曲目解説/八木澤教司(クラリネット奏者/神戸女学院大学音楽学部専任講師)】
2022年度は私が関東から関西に拠点を移し、神戸女学院大学音楽学部に専任講師として着任して3年目の年になりました。これまでは作曲家として国内外を飛び回る生活をしていましたが、腰を据えて後進の指導をする機会に恵まれたことで、新たな発見と喜びを実感しています。また、同時期に専任講師として着任されたクラリネット奏者の稲本渡先生との出会いは、同じ音楽家、教育者として共感するものが多く、顔を合わせれば教育・研究のアイデアを語り合う仲になりました。
この作品は本学の「ジョージ・オルチン記念音楽館」で、純真に音楽と向かい合う学生たちの姿を「天使」にたとえ、彼女たちが伝統ある美しいキャンパスで、葛藤しつつも希望のある未来へ邁進する様子を描きました。学生と教員、そして卒業生、関係者の皆様との「絆」が、より深まることを願って作曲し、稲本先生の独奏と本学が誇る天使たちの共演、私の指揮で世界初演しました。
作曲にあたり効果的なクラリネットの奏法については稲本先生に、ピアノ伴奏版の編曲にはピアニストであり本学専任講師の崎谷明弘先生にご助言頂きました。また、クラリネット専攻4年生の稲葉彩萌さんには、楽譜出版にあたって作品のイメージをデザインして頂きましたので表紙に使用しました。講師陣と学生たちが一丸となって研究・開発したこの作品が、広く親しまれることを心から願っています。(2022年11月)
【ソロを演奏する心構え/稲本 渡(クラリネット奏者/神戸女学院大学音楽学部専任講師)】
私が光栄にも「オルチンの天使たち」の初演をさせていただいた際に気をつけて演奏したポイントを書かせていただきたいと思います。演奏する皆さんの参考になれば幸いです。
冒頭のカデンツァ部分は広い場所で吹いているイメージでたっぷりと吹くよう心がけました。テーマ部分は八木澤作品の特徴でもある愛に溢れたメロディ、1音1音を大切に歌いつつ、伴奏の動きを意識してバンド(ピアノ伴奏)と共に音楽を創り上げる事を意識しました。速くなってからは、躍動感や賑やかさ等、様々なキャラクターを表現するため、同じスタッカートでも場面によって使い分けるなどアーティキュレーションの扱いを工夫しました。また、跳躍が多いので、均等にサラッと吹かずに音程(インターバル)の違いを感じて、力強さや軽かさを表現出来るよう心がけました。
クラリネットの魅力がたっぷりと込められた作品となっていますので、プロの演奏家だけでなく、高校生の皆さんにもぜひ挑戦していただきたいです。本学キャンパスでの風景が具現化されたような曲です。イメージを膨らますために、ぜひ足を運んでいただければ幸いです!
♪ オルチンの天使たち/八木澤教司
独奏クラリネット…稲本渡
指揮…八木澤教司
演奏…神戸女学院大学音楽学部ウインドオーケストラ
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