やぎりん日記

やぎりん!こと、作曲家の八木澤教司の日記です! 日々の体験や感じたことを書いていきます!
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Archive for 8月 14th, 2009

★ サグラダファミリアの鐘

8月 14, 2009 By: S.Yagisawa Category: 日記

P8143728本日は第49回東京都高等学校吹奏楽コンクール予選第4日目最終日。昨日の日記にも書きましたが堀越高等学校吹奏楽団が委嘱作品【「サグラダファミリアの鐘」—ガウディの継がれゆく意志】を世界初演する日でもあります。審査員としてではなく一般聴衆として応援に行くコンクール。昨年の東日本学校吹奏楽大会の客演指揮以来の新鮮さのある1日になりそうです。ホテルで昨日から今日のために東京入りしている新潟明訓高等学校吹奏楽部顧問の桝口和義先生と待ち合わせをしてゆっくりと府中の森芸術劇場へ。せっかくなので午前最後の方の団体を少し聴かせて頂いたり、意外と知っている人が観戦に来ていてご挨拶したりしていました。吉澤隆先生率いる堀越高もちょうど到着した頃で交流。卒業生の皆さんもたくさん応援に来ていましたぁ。桝口先生と吉澤先生は久しぶりの再会。桝口先生の激励が吉澤先生を益々熱くさせました。せっかくなので3人で記念撮影。すぐにチューニング室へ向かわれるようだったので、桝口先生と共に再び客席へ。尚美の生徒たちが補助員をやったり、聴きに来ていたりと熱心な姿も目にすることができました。しばらくすると午後の部が始まります。堀越高は午後の2番目。審査員席のあたりが一番同じ聴こえ方をするだろうと想い、審査員の先生方に見つからぬように少し避ける形で着席。審査員の先生方には何とか発見されませんでしたが隣に座っていた高校生には「八木澤さんですか?」と正体がバレてしまいましたぁ(笑)。

cYc6Nb堀越高のセッテイング。最終列打楽器中央にそびえたつ本物の“サグラダファミリアの鐘”が聴衆の目を引きつける。80キロもあるこの鐘はガウディが生前想定したサグラダファミリアの本物の鐘。とあるプロジェクトのためにガウディの意志を忠実に再現した鐘を富山県高岡市の老舗製作所の元井秀治さんが制作されたことをテレビで知った吉澤先生は直接お電話にて頼み込んで借用したのです。日本でたった1つしか存在しない鐘。そして将来バルセロナの教会「サグラダファミリア」が完成した時にはこの鐘が無数に配置されるのです(このサイズでも一番小さいという)。作曲前に吉澤先生は“既に鐘は入手しています!この鐘を使用した作品を!”という熱い言葉での依頼。改めてその記憶が蘇ります。演奏が始まった!課題曲はノリノリの演奏。惜しいミスはあるもののシャープで上品なサウンドと各声部のラインが明確に聴こえるバランス感覚。とても良い雰囲気だ。自由曲は冒頭から美しくピアノの音色が聴こえだす。前日の練習でフタを全開にしてもらって正解!表情豊かにキリストの誕生が描かれました。テンポUPしてキリストの受難のシーン。課題曲もそうでしたが本当にクラリネット5人とは思えぬサウンド感。50名弱でしかも管楽器を演奏しているのは40名弱(パーカッションが10人なので)。吉澤先生から作曲前に“戦力だった3年生が抜けてしまったので今回は苦労しそうです”と伺い、初心者パートを補うことも想定して作曲しましたが、今日の演奏はそんな必要なかったのでは?と思わせるほど一人一人が集中し吉澤先生の棒にしっかりと付いていっている。決して派手に鳴らして圧倒するようなスタイルではありませんが、想いが込み上げてくるような呼吸が間近で感じられる音楽創り。“コンクールを忘れて、演奏会のつもりで世界初演します”とおっしゃっていた吉澤先生の言葉の意味が良く判りました。確かにコンクールでの演奏というスタイルではなく、何か温かい聴衆を引き込む演奏。そう、コンクールでこんな演奏が聴けるのは田川伸一郎先生率いる市川市立新浜小学校吹奏楽部が【輝きの海へ】の時以来かもしれません。ピッチが、とか、ラインがズレた、というようなコンクール的な聴き方をしていた私自身が恥ずかしくなるような浄化されるような演奏。サグラダファミリアの鐘が鳴り響き、ガウディとその意志を継ぐ者たちへの讃歌が開始されると思わず涙ぐんでしまいました。吉澤先生は関東地域で真っ先に【輝きの海へ】を取り上げてくださり、デビュー当時であった私に激励のメールをくださった先生。これまでの7年間の想いと共にコラールが歌い込まれていくようで感激でした。コンクールの結果云々ではなく、この世界初演が素晴らしい演奏で会場に響き渡っている現状に私は大満足。吉澤先生と生徒さんに心より感謝です!

P8143745夜の反省会では生徒さんを励まし指導をされた卒業生の皆さんにも初めてお会いできました。竹田雄彦先生ももちろんそうですが、吉澤先生を支える顧問の先生方、保護者の皆様、そして卒業生の皆さんの熱い想いが、あの演奏を導いたのだと改めて感動しました。全ての団体を聴いた訳ではありませんがコンクールではどこのバンドも素晴らしい演奏をしていました。激戦のなかで堀越高等学校吹奏楽団が金賞を受賞し代表として都大会に出場できることは本当に奇跡なのかもしれません。ですが私には縦横、ピッチなどの西洋楽器での技術を超えた、一番根源的で人間として大切な“語りかける音楽”が堀越高にはあったからだと思えてならないのです。ハートフルフルの演奏をありがとう!吉澤先生と生徒さんにはこれからも生き生きとした純粋な音楽を続けて頂きたいと願っています!