● CUT!
毎年この時期になると嬉しいことに作品についてのお問い合わせを多数頂きます。4月、5月くらいまでのメールの返信は比較的に早めにできますが(時々、アドレスのエラーで返信不可能な場合がありますので送信前にメールアドレスのご確認を!)、6月〜8月はシーズンということもあり2週間くらい自宅に帰らないこともあり、メールを読むのが場合によってはその団体にとってコンクール終了後であることもあるでしょう。特に質問が多いのは「作品のカット」のことですが、こちらに関しては団の個性や技量も知らないのに安易に回答ができないので「団の納得のいくようにカットすることを許可します」としかお伝えできません。私にとってハーモニーや展開を踏まえてお伝えしたカットがたまたま“団にとって苦手なところばかり”になってしまうこともありますし、実はカットだけでは解決できないこともあります。誰の作品問わず“良いカット”というのは本来無いはずだと思いますし、それをコンクールの規定上カットする訳ですから、多少強引になってしまうのは仕方がないのかもしれません。ですが“良いカット”は無くても“音楽がスムーズに流れるよう聴かせる”ことは実際には可能です。それはカットした場所に薬を塗ったり、包帯を巻いたりといった温かみのある手当をした場合にのみ起こり得ることで、単に“2小節目から5小節目をカット”というような事務的なメールの返信では上手く伝わりません。ですから団独自で歌って考え、悩んだゆえに選ばれたカットの方が納得が行って良いのではないかと思うのです。時々、練習にお伺いして作曲した私でさえ違和感無く聴こえてしまうような“カット”に出会うことがあります。ですが、その時は決まってカットした場所に工夫がされています。それだけ指揮者の先生や講師の先生、或は生徒さんが作品を良く理解し考えられたのだと感心します。作曲者は作品を完成するにあたって1つの形を描くので固定のイメージがあります。ですから実際に演奏している現場の方が“音楽がスムーズに流れるよう聴かせるカット”ができるのかもしれませんね。
さて、前置きが長くなりましたが今回は【輝きの海へ】【はてしなき大空への讃歌】などの代表作に出てくる打楽器の奏法について解説します。こちらは知っているか、知らないか、の問題なので打楽器の先生がいらっしゃらず、どうして良いのか判らないバンドもあると思いますので写真付きでお知らせします。
○ コントラバスの弓で擦る(arco)
グロッケン(Glockenspiel)をコントラバス(Conrtabass)の弓(Bow)で擦る奏法で“ヒィーン”と美しい音が響きます。デ・ハスケの楽譜には“Bow with a double bass bow”と書かれていますが、写真のように楽譜に指定された鍵盤を垂直に摩擦するように弓で弾きます。楽器が古く鍵盤の弓に当たる場所がガタガタになっていたり、丸まってしまっている場合、弓が痛んでしまっている場合は“スー、スー”とむなしい音になります…。又、グロッケンを箱(ケース)から出さずに演奏を試みているのを見かけますが…恐らく不可能だと思います。弓を持つ時も初級者は写真のように両手でしっかり摩擦が起こるように固定して弾くと成功率が高まります。下から上に弾くか、上から下に弾くかは恐らく決まりは無いと思いますが、前者の場合、鍵盤がはずれてしまう可能性もあるので後者が良いかもしれません。
○ ティンパニの上にシンバルを乗せてロールする。ペダルは自由に上下すること。
ティンパニ(Timpani)の上に(Cymbal)を横から見てV字型に置きます。そして、そのシンバルをマレットでロールしながら、ティンパニのペダルを上下にアドリブで動かすと“ウォーン〜ウィーン”といった“うなり声”のような不思議な音が出ます。よくシンバルをV字型に置かず逆にしてしまっているのを見かけますが、こちらは誤りです。“コトコトコトコト”といった音になります。シンバルは不安定な状態で良いのです。又、シンバルをロールせず、単にシンバルを置いてティンパニの方をロールしているのもよく見かけます。同様にこちらも誤りでこの意図とは違います。デ・ハスケの楽譜には“Put a cymbal on timpani and roll it around”“Move the pedal of timpani up and down and change pitch freely”と書かれています。尚、ロールの強弱についても自由に付けて強調されると、より効果的ですね。